だいだい通信

「全治〇〇日」はウソ⁉

全治2週間と言われたのに、
全然治らないのはなぜ?

よく捻挫などでは「全治2週間」といった診断がされますが、これは2週間経てば治るという意味ではありません。
まずは2週間治療をしながら様子を見ましょう、といった意味合いです。
最初に全治2週間と聞いて安心し、2週間経っても全く治らないので不安になって相談に来られる患者さんもいらっしゃいます。

骨折はどれくらいで完治する⁈

骨折の場合も「全治〇〇週間」と言われますが、これには落とし穴があります。
「全治〇〇週間」は損傷した骨がくっついて固くなるまでの期間です。
「全治〇〇週間」で元通りになるわけではありません。

骨折の治療は骨折部位をギプスなどで固定することにより、関節が固まり、筋肉がやせ、腱が癒着するなどの機能障害を伴います。
結果、骨はくっついたけど関節が動かない、力が入らない、上手く動かせない、といった不便が残るのです。
当院にも「骨はくっついたけどうまく動かない」と言って来院される方は少なくありません。

骨がくっついて固定が外れた後は、機能回復のためのリハビリが必要になります。
リハビリによって運動機能が元通りになるには、骨がくっつくのに要した期間の2~3倍かかると言われます。

加えて、骨折の癒合(くっつく)期間には、

  • 骨折の場所
  • 折れ方
  • 年齢
  • 固定の状況
  • 合併症や後遺症の有無

などによって差があります。つまり個人差が大きいのです。

この通り、ひとくくりで「全治〇〇日」と表されても、人によって治るスピードが違ううえにリハビリの期間も必要になるので、あくまで骨がくっつくまでのおおよその目安くらいに思ったほうがいいでしょう。

骨折の治癒はただ安静に待つよりも、治療によって癒合を早めることで固定期間を短くし、集中的なリハビリで治癒期間を大幅に短縮することができます。

骨折より長引く捻挫

捻挫は「全治2週間」と診断されることが多く、骨折が無ければ軽傷だというイメージがありますが、実際は数週間でくっつく骨折よりもむち打ちや捻挫の方が長引きやすく、数か月以上かかることも珍しくありません。

その理由として、
①靭帯や腱は修復に必要な血液の流れが乏しい
②軽傷とみなされ、治癒に必要な固定や治療などの処置がされていない
といった事が挙げられます。
つまり、骨折よりも治りにくい組織なのに治療がおろそかにされているという事です。

骨折はくっついてしまえば簡単に同じ場所が折れることはありませんが、捻挫は組織が傷付いたままの状態になるので何度も同じ場所を捻挫します(クセになる)。
捻挫と言っても内容は様々で、捻挫は靭帯や腱の損傷を含み、損傷度合いによって分類わけされていますから、全ての捻挫が2週間で完治するわけではありません。

なぜこういった表現が使われるかというと、例えば交通事故の場合、被害者のケガが「全治15日以上」の場合は「重大な傷害」とみなされ、加害者の罪が重大になるので、骨折などが無ければ全治15日未満(2週間)とするのが通例になっている、といった理由があるのです。

実際は交通事故のムチ打ちなどの軟部組織損傷は組織が修復されるまで数か月かかることも多く、よほどの軽傷でないと2週間で完治することの方が珍しいです。

このように「全治〇〇日」は書類上の慣例であったり、最低限の修復までの大まかな予測であるのが実態なので、患者さんが受け取るイメージとはかけ離れていることが多々あります。

「全治〇〇日」に振り回されないように、医療機関とのコミュニケーションをしっかりと取り、自分のケガの状態と治療計画を正しく把握しましょう。
スポーツの試合や旅行などを予定していて、一日でも早く症状を改善したい場合は前向きな治療が不可欠です。