軽い筋肉痛は数日安静にしていれば治る事が多いですが、関節を痛めるとそうはいきません。
関節の損傷は自然治癒が難しく、数年以上治らないなんてことも珍しくありません。
痛みを我慢したまま無理をして使っていると、若くして変形してしまうこともあります。
ちなみに関節というのは骨と骨のつなぎ目部分で、骨以外にも軟骨・靭帯・膜といった軟部組織も含みます。
関節の構造① 軟骨
よく「膝の軟骨が減る」といったりしますが、体中のすべての関節でクッションの役割をしているのが軟骨です。
軟骨には血管や神経が無く、すり減っても痛みを感じないので、いつの間にか症状が進行していくパターンが多いです。
神経は損傷を感知するセンサーであり、血管は修復材料を運ぶルートでもあるので、それらが無いということは軟骨には自己修復機能がないとも言えます。
市販の「飲むヒアルロン酸」なども出回っていますが、サプリメントも含め、病院で処方される薬にも軟骨を増やすような効果は認められていません。
軟骨は一度減ってしまうと増えることが無いので、すり減りの初期段階でそれ以上進行しないように食い止めるのが一番重要になります。
関節の構造② 靭帯
靭帯は骨と骨をつないで関節を安定させ、動きの範囲を制限することで正常な動作ができるようにしています。
靭帯には多少の弾力性がありますが、筋肉ほど伸び縮みするわけではありません。
ですから、激しい力がかかった時には繊維が引きちぎれて傷ついてしまいます。
これが靭帯損傷、いわゆる「捻挫(ねんざ)」です。
靭帯にはコラーゲンといった物質が束になっていますが、生きた細胞はほとんど存在していません。
血液の流れもとても少ないので、靭帯は修復活動が乏しく治りにくい組織なのです。
傷つき伸びてしまった靭帯は勝手に縮んで治るということがないので、包帯などでしっかりと固定をして治療することが重要です。
靭帯の主な組織であるコラーゲンは加齢とともに減少していき、柔軟性が低下するとアキレス腱の断裂や四十肩などのトラブルが現れるようになります。
ただ、靭帯の柔軟性は運動やリハビリで取り戻すことができるということが研究で分かっています。
関節の構造③ 関節包
関節は関節包という膜で包まれていて、内部は滑液という粘り気のある液体で満たされています。
よく関節に「水がたまる」といいますが、これは関節包が炎症を起こして異常な水を分泌しているからです。
関節包は神経が豊富なので、炎症を起こすと腫れて強く痛みます。
前述のとおり軟骨は痛みを感じませんが、軟骨のすり減ったカケラが関節包の内側にぶつかると痛みの原因になります。
関節包が分泌する滑液は関節の摩擦を減らしたり、軟骨に酸素や栄養を届ける役目もある重要なものですが、加齢とともに分泌量は減ってきます。
関節包が新鮮な滑液を出し続けていないと、軟骨のすり減りなどのトラブルが起きやすくなります。
「年を取ると仕方ないのか」と思うかもしれませんが、滑液もリハビリによって分泌量が増えるので、早めのメンテナンスが重要です。
まとめ
関節は雑に使っていると自然治癒することなく負担を溜めこんで壊れていきます。
患者さんには「関節は消耗品」という意識をもって大切にしましょう、とお伝えしていますが、車の部品のように簡単に新品に取り換えられないのが厄介なところです。
湿布を貼って我慢するなんてことがないように、
捻挫などで関節を痛めたら早期にしっかり治療する。
そして年を取ったら早期にメンテナンスをしてトラブルを予防する。
この心がけが関節を丈夫で長く使うコツです。