私の妻が耳鼻科に行った時の話です。
耳を診てもらいに行ったのですが、先生が診察する際に痛い方とは逆の耳をのぞいたので、妻は「痛いのは反対の耳ですが…」と言うと、先生は「悪い方だけを診るのはモグリだよ」と言って笑ったそうです。
その話を聞いた私は、「なるほど、その通りだな」と思いました。
私の場合も、例えば足を捻挫した患者さんには「両方とも靴下を脱いでください」と言って、痛くない方の足も見せてもらっています。
痛い方を「患側(かんそく)」、痛くない方を「健側(けんそく)」と言いますが、両方とも触って見比べることで、腫れや痛みの程度、痛みの種類、関節の動き、筋肉の緊張などが判断できます。
痛い方だけを見ても、正しい診断はできないのです。
また、左右のバランスを比較することで、歩き方のクセや負担がかかりやすい場所などもわかります。
痛い方と反対側、もっと言えば全身を見ることで、とても多くの情報を得られます。
私は鍼灸師の免許も持っていますが、東洋医学では症状ばかりを診るのではなく、その人の身体がどのような状態なのかを判断して治療をします。木だけを見ずに森を見る、という考えです。
接骨院業界では、状態も確認せずに患者さんが痛いと言った所にハイハイと電気をかける人の事を「スイッチマン」と呼びます。
ただ機械のスイッチを入れるだけ、という意味で、治療技術や信念の無い人をからかってそう呼んでいるのです。痛いところだけを診ずに、視野を広く持って治療しなければいけません。
私もスイッチマンにならないよう、患者さんのお話に耳を傾け、少しでも分かりやすいように説明をすることを心がけていますが、試行錯誤の連続です。
余談ですが、この耳鼻科の話を二十代の患者さんに話したら「モグリって何ですか?」と聞かれてしまいました。。。モグリとは「無許可の・違法の・認められていない」といった意味があります。
つまり、こんな基本も知らない様じゃニセ医者だよ、という意味ですね。